Daily life in Tokyo

日々の日常と、好きなものについての文章と写真での記録

辻 邦生「生きて愛するために」

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 好きなエッセイの一つは、辻邦生さんの「行きて愛するために」です。

以下文章の一部抜粋です。

ちょうど樟の新緑は、心のなかの太陽のように、その後、生命感の源泉となった。物悲しい雨の日も、暗澹としたパリの午後も、目をつぶると、太陽に輝くきらきらした新緑が見えた。その途端、この地上とは、惰性で無感動に行きているばではない、という思いに貫かれた。死という暗い虚無のなかに、<地上の生>は、明るい舞台のように、ぽっかり浮んでいる。青空も、風も、花も、街も、人々も、ただ一回きりのものとして、死という虚無に取り囲まれている。この一回きりの生を、両腕にひしと抱き、熱烈に、本気で行きなければ、もうそれは二度と味わうことができないのだーーー私は痛切にそう思った。

こころに沁みます。